映劇レポート:三浦貴大さん&ヤングポール監督
2020年1月18日(土)
当館の理事を務める俳優の三浦貴大さんが最新主演作『ゴーストマスター』を引っ提げて、本作でメガホンを取ったヤングポール監督と共に上田映劇へ足を運んでくださいました。過酷な撮影現場での話から監督の映画愛や三浦さんの上田愛まで様々なお話を伺いました。
三浦貴大さん(以下、三浦さん):上田は大好きな街なのでまた舞台挨拶に帰ってこれて嬉しいです。今日はよろしくお願いします。
ヤングポール監督(以下、ポール監督):今観ていただいた映画の監督をしましたヤングポールと申します。僕は東京に住んでるんですけど、こちらの劇場は知っていて、聞いていてこちらで上映できて嬉しいです。よろしくお願いします。
原(番組編成):早速ですが、まずはヤングポール監督から。監督は本作が長編デビュー作ですが、映画に込めた想いをお聞かせください。
ポール監督:映画のスタートは孤独なもので、自分のオリジナルの企画というかストーリーのアイディアを考えたところからスタートした映画なんですね。考えた瞬間を結構はっきり覚えていて、深夜のファミレスの端っこの席で考えたストーリーだったんですよ。そこでずっと考えていたものが、TSUTAYAの企画のコンペで受賞できて、スタッフもひとりひとり集まっていって、撮影して、撮影終わって、編集があるんですよ。だんだんほんとに映画できてくるらしいぞというか、徐々に実感になってくるというか、人も増えてって、その過程でこういう風にしたらどうですかと、いい意味で変わっていくんですよね。膨らんでいくというか、それがおもしろかったし、自分一人でずっと考えていたときにはなかったアイディアだったりとか、旅のような。映画作るのって旅のみたいなところがあって、それが印象的ですよね。
原:初めから三浦貴大さんというのは想定していたんですか?
ポール監督:書き始めた時ですか? 最初から三浦さんを想って…と言うと思いますか? 言わないです。違います。僕の場合はあんまり想定して書かないんですよ。具体的に考えないんで進めるんですね。そこで三浦さんが一緒にやろうってなった時に、三浦さんが演る黒澤明ってなんだろう。現場でこういう風になるんだってなってそういうところが映画制作のおもしろいところで。あんまり僕は最初から決め打ちするタイプではないですね。
原:三浦さんは黒澤明というキャラクターを演じてみてどうでしたか?
三浦さん:そうですね、冴えないというところで普段とかけ離れた感じではないんですけど。僕、色んな映画の現場に行って、色んな映画の助監督を見てきて、1現場に2、3人は助監督います。結構色んな助監督を見てきて、黒澤みたいな感じの人って実際にいて。チーフがいて、セカンドがいて、サードがいるって感じなんですけど、サードの助監督の子って現場が終わる前に消えるんですよね。悲しいあるあるで、いなくなってるんですよね、いつの間にか。「もう無理ですって逃げました」って。でも、そういった中で逃げずになんとかやってきた人なんだなっていう想像をしつつ、今まで見てきた助監督を総合して演った感じですかね、黒澤明という男は。
原:夏の暑い中、全編廃校での過酷な撮影だったと聞いてるんですけど、特に苦労した点とか印象的なエピソードとか教えてください。
ポール監督:絶対に辿り着くひとつのお話というのがありまして、それは僕が現場で気絶したという話です。過酷すぎて。再現するとですね、スタッフとこう打ち合わせしてるんですけど、説明してるうちに意識が飛んでふらっとなって、はっと気付いたら椅子に座ってたんですよ。それで「大丈夫ですか?」って言われて「大丈夫です」って言った瞬間天井が見えてて、倒れていたという。それくらい過酷な現場でありましたけども、不思議なもので、完成しちゃうんですね、映画が。気絶をしても。それは感謝以外の何ものでもないですね。
原:現場は止まらなかったんですか?
ポール監督:止まりましたね
三浦さん:1〜2時間くらいすかね
ポール監督:そうすね。下駄箱というか昇降口に「監督用意しました」ってマットレスが敷いてあって、マットレスに僕うつ伏せでこう…(うつ伏せを再現するポール監督)また残酷なスタッフがいまして、撮影の途中で「監督監督見てくださいよ」って僕のうつ伏せの写真見せてくるんですよね。とんでもねーなって思いましたけどね。
原:楽しかったことはありますか?
三浦さん:全体的に楽しかったですけどね。スケジュールの無さと暑さと環境、あと虫だらけの、クーラーもつかない。環境的には辛かったけど、撮影はすごい楽しかったですよ。
ポール監督:楽しかったです。毎シーン毎シーン、三浦さんをはじめキャストの皆さんが、みんなすごいアイディアを持ってきてくれるというか、やってくれるんですよね。キャスト同士も撮影以外のところでも関係性があった感じしましたけど…。
三浦さん:そうですね、毎日宿帰って飲んでましたからね。
ポール監督:酒ですね?
三浦さん:酒ですね。酒飲みしかいなかった。まあ…この人ですね。
ポール監督:この人ですね。
(ポスターに写るもう一人の主演・成海璃子さんを指差す2人)
三浦さん:一番飲むのこの人ですからね。
ポール監督:いま、えーって言うじゃないですか、ほんとですからね。
三浦さん:地方ロケにマイウィスキーって…。
ポール監督:荷造りするじゃないですか、これ必要かなー、着替えこれくらい必要かなーっていうのと同じレベルでボトル必要かなーってなってますからね。
三浦さん:あ、あれは寂しかったですね、やっぱり。普段撮影ってバラバラに撮影するんですけど、今回は結構順撮りで頭から撮影できたんですけど、段々人死んでくから飲む人数減ってくんですよね。あれはねぇ、寂しかったですよ
ポール監督:酒強い奴が生き残ってくみたいな。その寂しさ僕も覚えていて、最初はたくさんいて大変なところから始まったのに、段々減ってくと、あ、ほんとにみんな死んでったんだなぁみたいな。なんかそういう寂しさはやっぱりあって。撮影をやりながら関係性ってできていくじゃないですか、セッションというか、段々上手くいくとお別れなんですよね。あ、ひとつ嬉しかったことは、大変な現場だったんですけど、ある日成海さんと三浦さんから「ご飯でも行きますか」って声をかけてもらえて、お酒飲んだのはすごく嬉しかったです。
三浦さん:成海さんと話してて、あ、飲みながら話してますけど。スタッフが結構ベテランの方が多かったじゃないですか、だから、監督が本当に好きなことできてるのかなって…それがストレスで倒れたんじゃないかって話してまして。これはちょっと僕と成海さんで話を聞いてみようというわけでご飯に誘ってみて、ご飯に行ったんですけど、「監督…自分のやりたいことできてますか?」「できてますよ!」って言われて…
ポール監督:そもそも、心配をさせるというのは監督としてどうなのかっていうのはありますが、けどね、ぶっちゃけそこで「やりたいことできてますか?」「いや〜」って言えますか?っていうね?
三浦さん:「いや〜」って言われたら僕スタッフに言いにいきますよ
ポール監督:まじですか!? いや、できなかったわけじゃなくて、ある種戦いですからね。自分がこういうことをやりたいんだっていう時に、スタッフも僕より経験あるし、色んな監督とやったりするから、個性のある人って「監督それおもしろいんすか?」みたいなことになるわけですよ。だから、自分のやりたいことをおもしろいと思ってくれるように伝えるのが戦いで、そういうのが撮影の大変なところ。ネガティブな意味じゃなくて、それはそういうものかなと。必ずしも全部自分のやりたいことができたからいいってことでもないんですけど、まあ、それが撮影ではありますよね。とは言え「できてますか?」って言われたら「できてる」って言うっきゃない。けど、嬉しかったし、楽しいひと時でした。
原:本作のキャッチコピー、究極の映画愛になぞらえましてお二人の個人的な究極の◯◯愛をお聞きしたいんですけど、ヤングポール監督には究極の映画愛No.1映画を教えてください。三浦さんには究極の上田愛を教えていただければ…。
ポール監督:究極の映画愛ですかね。一本って言われてその度に作品変わってるんですけど、今日言うやつはですね、中島貞夫監督というヤクザ映画の監督がおりまして、その中島監督の『893愚連隊』っていう松方弘樹さんが出てる映画があるんですけど、それです。なぜかと言うと、僕は大学から東京に来たんですけど、東京の名画座でその映画を観たんです。それまで僕、ヤクザ映画観たことなくて「ヤクザ映画?なんかこう粗悪に大量生産された暴力的な映画でしょ?」みたいな感じで観に行ったら全然違ったんですね。撮影もスタイリッシュだし、俳優もすごい輝いてるし、かつ、ストーリーも深みがある。それを商業的なベースの中で高い技術力で商業性と娯楽性と芸術性の両方ある。それをヤクザ映画の中でやれるってすごいなって思ったんですよ。だから、あれからただ映画観るだけじゃなくて、どうやって作ったんだろうってところにシフトしていったところはあって…、なので、今日の一本は『893愚連隊』を。
原:ありがとうございます。それでは三浦さんの上田愛を…。
三浦さん:上田愛…。上田はほんとに大好きでよく来るんですけど、去年1年間封印してまして。去年1年間来てないです。あの、ここ来ると帰りたくなくなるから…。なんですかね、あの…もう仕事辞めちゃおっかなってなるんすよ。なので、去年仕事が結構忙しかったので、忙しい中で上田に来るとたぶんまじで辞めちゃうなと思って、去年来なかったんですけど、それくらい好きなんです、この土地。住みてぇなって…なんか、安く家貸してもらっていいですか?
ポール監督:三浦さんがこっちに住んでるから、こっちでロケするかっていう。三浦さん合わせで。
三浦さん:そうですね、上田オールロケを、また再び。『サムライフ』以来のやりたいなと思います。
軽快なトークで会場を終始笑いで包み込んでいた三浦貴大さんとヤングポール監督。三浦さんの上田へ来ることを封印してしまうほどの上田愛には上田の方々も驚きとそれ以上の嬉しさを感じていたようでした。上田ロケ、ぜひ実現してほしいですね!
※この舞台挨拶は2020年1月18日におこなわれました。
(インタビュアー:番組編成・原悟/執筆者:もぎりのやぎちゃん)