『幾多の北』と三つの短編

過去の上映作品
[上映日程]7/1~7(休映:7/2~3)
*7月1日(土)18時30分からの回の上映後、山村浩二監督、幸洋子監督、矢野ほなみ監督によるアフタートークがあります(オンライン)

“ 目が、耳が、そして心のありようが生まれ変わる、あなたの「北」を探す旅。”

日本を代表するアニメーション作家・山村浩二が監督した初長編と最新短編、そして彼がプロデュースした新進気鋭の作家2人の傑作。世界中の映画祭で合計50もの賞に輝く4作品、一挙に国内初公開。

『幾多の北』と三つの短編
配給:WOWOWプラス/Au Praxinoscope(オープラクシノスコープ)
配給協力:チャイルド・フィルム

[上映作品]
『ミニミニポッケの大きな庭で』 ©2022 YUKI YOKO / Au Praxinoscope
『ホッキョクグマすっごくひま』 2021©Yamamura Animation
『骨嚙み』 ©2021 Honami YANO, Au Praxinoscope
『幾多の北』 2021©Yamamura Animation/Miyu Production

[上映スケジュール]

「『幾多の北』と三つの短編」アフタートーク付上映のお知らせ。

[公式サイト]
wowowplus.jp/cinefil/ikutanokita

上映作品(上映順)

『ミニミニポッケの大きな庭で』
[2022年/日本/シネマ・スコープ/5.1ch/7分] 
監督:幸洋子
プローデュース:山村浩二

観察、記録、実験しながら日々を紡いだ、いとをかしアニメーション詩。NHK Eテレの番組「シャキーン!」の番組内アニメーションも手掛ける幸 洋子(ゆき・ようこ)が、自身の日記を落書きのように大胆にアニメート。自由律俳句のようなテキストとhonninmanによる過激な音楽、サラウンドの混淆。「アニメーションってこんなに自由なんだ!」と開いた口が塞がらない衝撃作。

『ホッキョクグマすっごくひま』
[2021年/日本/シネマ・スコープ/5.1ch/7分]
監督:山村浩二

すごく暇なホッキョクグマは、広い海で様々な海獣たちと出会う。日本語と英語の言葉遊びで、絵巻物風に描く「海獣人物戯画」。楽しい音楽と歌に合わせて、かわいい墨絵の動物たちがまったりと遊ぶ。

『骨嚙み』
[2021年/日本/16:9/5.1ch/10分]
監督:矢野ほなみ
プロデュース:山村浩二

父親のお葬式で、少女は父と過ごした最後の夏を思い出す。 光の粒子のようにまたたく点描のレイヤーが映し出す、日本のとある小さな島でのいとなみ。有頂天のPVやアニメ「TRIGUN STAMPEDE」のエンディングアニメーションも手掛ける矢野ほなみが、2年の歳月を費やして紙の表にも裏にも色彩を打ち続け、自身の過去と向き合った一作。その余韻は今も世界中を震わせている。

『幾多の北』
[2021年/日本=フランス/アメリカンビスタ/5.1ch/64分]
監督:山村浩二

ナレーションやセリフもなく、画面に現れるテキストと繊細に動く絵、そして音楽や効果音が巧みにミックスされたサウンドに包まれながら「体感」するアニメーション。音楽を聴くように、展覧会の絵を眺めるように、旅は続く。旧ソ連のタルコフスキーや、ハンガリーのタル・ベーラなどヨーロッパの実写映画作家の時間の流れをも思わせる、堂々たる大作。ポスト3.11、コロナ禍とも共振し、作品に身をゆだねるうちに、観る者それぞれの「北」が立ち上がる。

INTRODUCTION

アヌシーもオタワも絶賛! 山村浩二の野心的初長編『幾多の北』、ついに凱旋公開

日本を代表するアニメーション作家として、また既に100冊を越える絵本作家としても知られる山村浩二。近年、NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」のエンディング・テーマだった「べるがなる」の作詞者でもあり、現在「みんなのうた」でオンエア中の「小さな夢」(うた:ヒグチアイ)のアニメーションも手掛けています。また今年劇場公開された犬童一心監督によるダンサー田中泯のドキュメンタリー映画『名付けようのない踊り』のアニメーション・パートを担当したことも大きな話題を呼びました。

山村浩二といえば、第75回米アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされた『頭山』(2002)を始め、数多くの作品が世界中の映画祭で130を越える賞を受賞、世界四大アニメーション映画祭(フランスのアヌシー、カナダのオタワ、クロアチアのザグレブ、日本の広島)の全てでグランプリ受賞歴を持つ世界唯一のアニメーション作家であり*2、国内はもとより、世界中の作家たちから称賛を浴び続ける存在です。

『幾多の北』(2021/64分)は、彼が月刊誌「文學界」(文藝春秋)の表紙のために2012年から2014年にかけて毎号描いていたイラストとそれに付随するテキストをアニメーションに発展させたもので、コロナ下での隔離状態の中で一気に完成させた初の長編作品。東日本大震災後に彼自身が感じた不安や苦悩が、オランダの前衛ジャズ・ミュージシャンにして作曲家ウィレム・ブロイカー(1944-2010)のどこかサーカス的な音楽に乗せて、断片的なイメージや書かれた言葉で表現されていきます。明快なストーリーを持たず、一般に「長編アニメーション」という言葉からイメージされるものとは異なる仕上がりで、その前例のないチャレンジは世界で大きく評価されました。今年2022年の5月に行われた第61回アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コントルシャン部門*3でクリスタル(最高賞)を、さらにこの9月には、第46回オタワ国際アニメーション映画祭の長編部門でグランプリを受賞するなど、既に国内外で8つの賞に輝いています。

世界28の賞に輝く矢野ほなみ監督の話題作『骨嚙み』を含む三つの新作短編も同時公開

『幾多の北』に加え、墨絵のかわいい動物たちが歌に合わせてコミカルに動く山村の監督作『ホッキョクグマすっごくひま』(2021/7分)、山村が若い作家たちをプロデュースした『骨嚙み』(矢野ほなみ監督/2021/10分)、『ミニミニポッケの大きな庭で』(幸 洋子監督/2022/7分)と、三つの新作短編も同時上映します。これら三作品も既に国内外の映画祭で多くの受賞を果たしており(特に矢野の『骨嚙み』は昨年2021年の第45回オタワ国際アニメーション映画祭の短編グランプリほか世界中の映画祭で28もの賞を受賞)、全四作品を合わせるとトータルの受賞数は実に50にも及びます*4。今回の上映は、山村浩二の現在に加え、彼の元で育った新しい才能までも一望できるショーケースであり、現在日本の「作家によるアニメーション」の「極北」を体験出来る絶好の機会とも言えるでしょう。
「『幾多の北』と三つの短編」(総上映時間:約90分)

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