[INTRODUCTION]
オノレ・ド・バルザックが書き上げた「人間喜劇」の一編、『幻滅—メディア戦記』を映画化した本作は、200年も前の物語とは思えないほど、現代と酷似したメディアの状況を鋭利に描いた、社会派人間ドラマだ。メガホンを握ったのは、バルザックの原作を学生時代から映画化したいと望んでいたグザヴィエ・ジャノリ監督。念願の本作で、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞において、史上最多15部門ノミネートを記録し、作品賞を含む最多7冠を受賞した。主演のリュシアンを演じるのは、『Summer of 85』で日本でも大きな注目を浴びたバンジャマン・ヴォワザン。リュシアンの先輩格である、世渡りの巧いジャーナリストを演じるのは、『アマンダと僕』の演技が印象的な、ヴァンサン・ラコスト。私欲にまみれた人々のなかで唯一、誠実にリュシアンを見守る作家のナタン役は、世界的な人気を誇るグザヴィエ・ドラン。生き馬の目を抜くようなパリの都とマスメディアの世界。ジャノリ監督は、そんな現代的とも言える要素を強調しながら、風刺に富んだ、極上のエンターテインメントを創り上げた。