親愛なる同志たちへ *5月のオープンダイアログ対象作品

過去の上映作品

[上映日程]5/14~27(休映:5/16、23、30)
*5月29日(日)9時55分〜の回の上映後、重澤珈琲(映劇内)にてオープンダイアログを実施します

“ 私は信じていた。
 この祖国、母であること、そして我が人生を——— ”

1962年6月、スターリン亡き後の冷戦下ソビエト。
ソ連解体まで30年間隠蔽されたある衝撃の事件。
国家に忠誠を誓った母親が選んだのは、
権力と個人の狭間で生まれた究極の決断だった———

[INTRODUCTION]
ロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキー。弟のニキータ・ミハルコフとともに旧ソビエト連邦時代から今に至るまで、半世紀以上も第一線で活躍しているフィルムメーカーだ。キャリア初期の文芸映画『貴族の巣』(70)や『ワーニャ伯父さん』(71)、黒澤明の原案に基づくアメリカ映画『暴走機関車』(85)、スターリン時代の実話を映画化した『映写技師は見ていた』(91)などは日本でも広く知られている。
そんな現在84歳の巨匠が新たに発表した『親愛なる同志たちへ』は、1962年にソ連の地方都市でありウクライナにほど近い町ノボチェルカッスクで実際に起こった虐殺事件と向き合ったヒューマン・ドラマ。ソ連崩壊後の1992年まで30年間、国家に隠蔽されてきた衝撃的な歴史の真実に迫った作品である。第77回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第93回米アカデミー賞国際長編映画賞・ロシア代表に選定されるなど、すでに世界各国で絶賛を博している。
コンチャロフスキー監督は、母であり、そして共産党員でもあるリューダの繊細に揺れ動く心情を巧みに演出したことで、時代に翻弄される一人の女性をドラマチックに描いた。さらに、サスペンスとアクションを織り交ぜ、リューダがたどる3日間の激動の運命をスリリングに描出した。また、モノクロ映像にすることで、残酷さよりも静謐な恐ろしさが立ちこめ、当時のソ連の冷徹な空気を見事に映し出している。約5000人のデモ隊が占拠した広場に銃声が鳴り響き、阿鼻叫喚のパニックが引き起こされる虐殺事件のシーンでは、その圧倒的なスケールと緊迫感に息をのまずにいられない。
KGBの公式データによると死者26人、負傷者数十人、逮捕者数百人を出し、7人が処刑された(非公式のデータでは死者100人とされる)とされるノボチェルカッスクの虐殺は、決して遠い過去の話とは言いきれない。重いメッセージをはらんだ本作を鑑賞した者は、ロシアによるウクライナ侵攻、香港、ミャンマーにおける民衆弾圧のニュースが脳裏をよぎるだろう。名匠コンチャロフスキーが完成させたこの渾身の新作は、まぎれもなく現代の不穏な世界情勢と地続きにある歴史大作なのだ。

[STORY]
1962年6月1日、フルシチョフ政権下のソ連で物価高騰と食糧不足が蔓延していた。第二次世界大戦の最前線で看護師を務め、共産党市政委員会のメンバーであるリューダは、国中が貧しい中でも贅沢品を手に入れるなど、党の特権を使いながらも父と18歳の娘スヴェッカの3人で穏やかな生活を送っていた。そんな中、ソ連南西部ノボチェルカッスクの機関車工場で大規模なストライキが勃発。生活の困窮にあえぐ労働者たちが、物価の高騰や給与カットに抗議の意思を表したのだ。この問題を重大視したモスクワのフルシチョフ政権は、スト鎮静化と情報遮断のために高官を現地に派遣する。そして翌2日、街の中心部に集まった約5000人のデモ隊や市民を狙った無差別銃撃事件が発生。リューダは、愛娘スヴェッカの身を案じ、凄まじい群衆パニックが巻き起こった広場を駆けずり回る。スヴェッカはどこにいるのか、すでに銃撃の犠牲者となって“処分”されてしまったのか。長らく忠誠を誓ってきた共産党への疑念に揺れるリューダが、必死の捜索の果てにたどり着いた真実とは……。

『親愛なる同志たちへ』
[2020年/ロシア/ロシア語/モノクロ/スタンダード/121分]
監督・脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー
出演:ユリア・ビソツカヤ、ウラジスラフ・コマロフ、アンドレイ・グセフ
原題:Дорогие товарищи!|英題:Dear Comrades!
日本語字幕:伊藤美穂
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
© Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020

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