映劇レポート:『最初の晩餐』(2/1 上映初日)
2020年2月1日(土)おかえりなさい、映画『最初の晩餐』
上田ロケ作品『最初の晩餐』1ヶ月に及ぶロングラン上映は常盤司郎監督と森谷雄プロデューサーによる舞台挨拶から始まりました。ロケ地を上田にしたことで生まれたキャスティングやアイディアなど、上田ならではのお話をお聞きしました。
常盤司郎監督(以下、常盤監督):今日はロケ地の上田に戻ってこれました!ほんとに皆さん、こんなに大勢の人でホッとしました。10人くらいしか来なかったらどうしようとドキドキしてたので。ほんとにありがとうございます。今日はお時間30分くらいですけど楽しんでいただけたらと思います。
森谷雄プロデューサー(以下、森谷P):今日は本当にありがとうございます。なんと私、何を隠そう上田映劇の理事をやっております。前回は大泉洋というもじゃもじゃの男を連れて、今回も常盤司郎というもじゃもじゃの男を連れて参りましたので、今日は楽しくやりたいと思います。よろしくお願いいたします。
原:それではさっそくですが、なぜ上田がロケ地に選ばれたのでしょうか?
森谷P:なぜ上田だったかというと、僕が『サムライフ』という映画を上田で撮らせていただいて、本当に上田の皆さんの暖かさとか映画に対するご理解とかすごく高いのもあったんですけど、常盤さんのお書きになった脚本を初めて読んだ時に誰の心にもある故郷(ふるさと)感みたいなのを感じて、実はそれ上田だったんですね、僕にとって。それで「監督どうですか? 上田って撮影に協力的ですし、誰の心にもある原風景がある場所ですよ」って言って一緒に見に来たんですよね?
常盤監督:そうですね。「蕎麦でも食いに行きませんか?」って言って。
森谷P:刀屋さんでね。大盛りの蕎麦を食べに。
常盤監督:「はい、行きます」って言って。
森谷P:どうだったんですか? 初めて上田に来た時の印象は。
常盤監督:いきなり山に連れて行かれた記憶が。
原:そうですね。その案内をしたのが僕だったので。山と家を最初に見ようかなと色々見て回った気がしますけど。延々山道を歩きながら…
常盤監督:僕は山に行くって知らなくて、ぺっらぺらの靴で来たんですね。こんなに歩くのかってくらい砂利道を歩かされ…っていう記憶です、上田。
森谷P:前の晩までそういう予定じゃなかったんですよ。けど「やっぱり山行かないとこの映画のことわかんないんじゃないですか?」みたいな風に口説いて。原さんにもお願いして…
原:前の晩に、美味だれの(やきとりを)食べながら、鈴木(剛)プロデューサーも入って、そんな話をした記憶がありますね。
森谷P:そう、だから急遽、山登ったんですよね。
常盤監督:そう。だからほんとに何も用意してなくて、足がガタガタでした。
森谷P:山を登りながら、シュンとかお父さんの気持ちっていうのはどういう気持ちになるんだろうって考えながら話してたら、キャスティングがなぜか思いついちゃったんですよね。
常盤監督:そうですね。その時は染谷将太くんだけ決まってたのかな。あ、シュン兄だけ決まってなくて…。「窪塚くんとか考えてるんですけど」って言ったら原さんの顔が「それっすよ」ってなって…
原:それにしか見えなくなりました。
森谷P:上田で窪塚くんのキャスティングを思いついたっていうね。
森谷P:実際に監督は冬編と夏編に分かれて上田で撮影されたわけじゃないですか。冬の風景と夏の風景を両方上田を切り取ってどういう印象でした?
常盤監督:やっぱり冬は寒い、夏は暑いっていう。や、上田だからじゃなくてこれはお通夜の話なんです。だから遮蔽してあったんです、夜に見せたかったので…。だから夏の暑さがね、尋常じゃなかったっていう。ただやっぱり上田の街並みとかを見てて、森谷さんの言っていたようにある種の原風景みたいなのがあって。僕、福岡の筑豊地区出身で、映画は筑豊の言葉で喋ってるんですけど…。やっぱりどこの人が見ても自分の田舎のように感じるには、上田で撮ったっていうのはすごく大きな気がしたんですね。
森谷P:ほんとにね、なんか懐かしい感じなんですよね。そういう感じがすごいする街なんですよね。
原:(実際の撮影に関して)夏と冬でシーズンを分けたのは良かったと思うんですけど、そこは森谷さん的にはなにか?
森谷P:プロデューサー的にはすごい英断を下したと思うんですけど…。分けるとお金がかかちゃうので。
常盤監督:見ていただいたように、1年、季節をちゃんと追って撮って。特に桜の木とかね、桜のためだけに車で撮りに来て帰っていったっていう。
森谷P:上田といえば桜でございますからね。でもやっぱり冬の雪のシーンって効いてるじゃないですか。
常盤監督:ほんとにね。
森谷P:あのお家の庭に本当に雪が積もってね。あれで撮ってるっていうことがやっぱりね。
常盤監督:雪合戦とかね。
森谷P:ほんとにそういったシーンとか、カットが効いてますよね。それはやっぱり上田で撮ったからですよね。
(会場から拍手が起こる)
常盤監督:そう言うと明日も来るんですかね?
森谷P:明日は今日とまた違う内容のトークをしますからね。もちろんいらっしゃいますよね?
常盤監督:あの、上田のトーク、明日いっぱい出るだろうなぁ。
森谷P:直感だったんです、ほんとに。台本読んで「上田だ、これ!」って。
原:そういえば他の場所って行ったんですか?ロケハンとか
常盤監督:結局行ってないっす。
原:あの時来て、山道歩いて、
常盤監督:ここじゃないっすかね、決めちゃいましょうって。
森谷P:でもね、山登ったのは良かったと思いますよ。
常盤監督:ぺらぺらの靴でね。血が出ましたからねぇ。
森谷P:上田で山登ったからたぶん、
常盤監督:気持ちはわかりましたね。シュン兄のね。
原:上田で、その中でも特に印象的に残ってるロケーションとかあるんですか?
常盤監督:確実に家ですよね。
原:東家ともう一軒、最後の最後まで悩んで決めたっていう印象があります。
常盤監督:そうですね。清水邸というところで撮ってるんですけど、もう一個悩んでたのが山本邸っていうところなんです。ちなみにうちのカメラマンが山本さんで、美術が清水さんだったんですけど、どっちになるんだって話をしながら、清水さんの勝ちーって感じに。
原:(美術の)清水さんはこの家(清水邸)を見に行く前の晩の食事の時には、山本邸に傾いてましたよね、気持ち的に。
常盤監督:確かに、確かに。ただ、ものすごく飾らなきゃいけなかったんですよね。普通の一般家庭っていうのがちゃんと出たのがやっぱり最終的にはここ(清水邸)だったかもしれないですね。撮影ってやっぱりカメラを色んなところに置かなきゃいけないので、部屋の間取りが広い方が使いやすかったりするんですね。ここ(清水邸)はね、ちょっと狭くはあったんですけど、でもそれが逆に普通の匂いが出たっていうのもあるかもしれないですね。
原:ここの家(清水邸)になったおかげで通学路とか、印象的な橋とか…
常盤監督:橋は一番大きかったと思いますね。最初、脚本書いた時は普通の長い坂道だったんですね。なんですけど、橋があることであそこを渡るって行為が家に帰る行為につながってた気がするんですね。それはなんかあの橋が生きたなっていう…
原:ロケーションが意味を持った感じがしますね。
森谷P:最後にね、麟太郎の彼女も一緒に家族と橋を渡って行くっていうカットが印象的に撮れてますね。
常盤監督:そこも脚本にはなかったですからね。2人は橋を渡るつもりはなかったので…。
原:森谷さんは、どうですか?『サムライフ』では監督を、今回はプロデューサーという立場で上田に入られて…
森谷P:そうですね。エキストラで参加されてた方いらっしゃいます?あ、ありがとうございます。ほんとにね、皆さん、ものすごい協力的で。毎回思うんですけど、ここまで撮影に協力的な街、なかなか無くて。で、(会場の)皆さんも、参加してくださる皆さんも、ものすごく映画が好きなんだなって感じがしますし、それを改めて結構感じたんですよ。それで僕は今回プロデューサーですけど、『サムライフ』の時のことを覚えてくださってる方がいて。「監督ですよね?監督ですよね?」っていう声かけてくださったりして、そういうすごい温かさみたいなのを改めて感じたんですよね、今回の撮影で。やっぱり上田で撮影してよかったなと思いました。それはほんとに思いました。
当日はたくさんのお客様にお越しいただきました。中にはエキストラに参加された方も多くお運びいただいたようで、舞台挨拶終了後のサイン会では監督たちとの久々の再会に喜ばれていたようでした。また質疑応答の中での森谷Pの「上田は映画監督にしてくれる街」という言葉がとても印象的でした。
最後に「大切な人をぜひ連れてきてください」という常盤監督の言葉で『最初の晩餐』初日舞台挨拶は締め括られました。
※この舞台挨拶は2020年2月1日におこなわれました。
【登壇者】
常盤司郎監督
森谷雄プロデューサー
【インタビュアー】
原悟(上田映劇番組編成/『最初の晩餐』ロケ地コーディネーター)
【カメラマン&執筆者】
もぎりのやぎちゃん