4月の PICK UP MOVIE !『ドマーニ! 愛のことづて』

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自由を勝ち取るために 何をしたか?

 1946年、イタリア・ローマで物語が始まる。
 敗戦後の荒れた世相の中で、主人公デリアの夫は、容赦なくデリアに暴力を振るう。二度も戦争に行ったせいだというが、辛い目に遭ったのは男だけではない。暴力は男たちの伝統であるかに見える。
 一方妻のデリアにとっても、このひどい状況がどうやら当たり前になっているらしい。起き抜けに理由もなく夫にひっぱたかれても、表情も変えず食事の準備をし、いたずら盛りの息子や義父の世話をし、そのうえ種々の賃稼ぎの仕事に出かけていく。逃げ場はないから日々の生活を続けるしかない。デリアを演じているのは、これが初監督作品で、脚本も担当した喜劇俳優のパオラ・コルテッレージだ。重いテーマをやさしくテンポよく語る。なかでも抽象化した表現で抑圧や抵抗を描き、絶望的な状況を希望へとつなげる演出は見事だ。
 家事、育児、賃仕事といつも急ぎ足で街を通り過ぎていくデリアにも、小さな慰めがある。彼女にずっと思いを寄せている自動車修理工のニーノとのお喋り、それに街の治安維持に従事している米占領軍の兵士ウィリアムだ。彼は言葉は通じないものの、生傷の絶えないデリアに同情を寄せている。
 娘にはよりよい人生をと願い、デリアは精一杯の頑張りで娘の婚約までこぎつけた。ところがどうやら、娘も自分と似た人生に歩み入ろうとしている。それに気づいたデリアは、いったい何をしたか?
 そんなある日、デリアは珍しく自分あての郵便物を受け取る。その手紙を時折取り出しては眺めるデリアは、何か行動を起こそうとしているようだ。青果店を営む親友のマリーザにも秘密を打ち明けて協力を頼む。マリーザは、逃げるなら逃げ切らないと殺されるよ、と釘を刺す。友人たちもデリアの苦境を知りながら、何もできずにいたのだ。
 さて、決行の日。なんと思わぬアクシデントでデリアは家を出られない。このままだと、また同じ日常に引き戻されてしまうではないか。ハラハラドキドキの果てに、デリアはいったいどこへ向かったのか? 果して、ひるまずに昂然と男に対峙できる日は訪れるのか?

田村志津枝
ノンフィクション作家。一方で大学時代から自主上映や映画制作などに関わってきた。1977年にファスビンダーやヴェンダースなどのニュー・ジャーマン・シネマを日本に初めて輸入、上映。1983年からホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンなどの台湾ニューシネマ作品を日本に紹介し、その後の普及への道を開いた。

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4月の PICK UP MOVIE !「自由を勝ち取るために 何をしたか?」

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『ドマーニ! 愛のことづて』

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