シュルレアリスム100年映画祭【12/6~19】*特集上映
[上映日程]12/6~19(休映:12/8~9、16、18)
“ 20世紀最大の芸術運動 シュルレアリスムの深遠なる世界へようこそ ”
1924年10月。アンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表。
ここに20世紀最大の芸術運動がはじまる。
それから100年。
その運動は、文学、絵画、映画、音楽、思想など広範な領域に影響を及ぼし、その本質は今の時代にも受け継がれている。
シュルレアリスムとはいったい何か?その深遠なる世界を紐解く———
第一次世界大戦という未曽有の戦争のさなか、1916年2月に、スイス・チューリッヒではじまった芸術運動「ダダ」。戦争への抵抗や虚無感から生まれたダダイズムは、西洋近代の科学、芸術、社会などあらゆる既成の価値観を否定、破壊し、「反芸術」(ハンス・リヒター)と称され、瞬く間にパリ、ベルリン、ニューヨークといった世界の都市へと広がる。
1920年、ダダの主要メンバーであるトリスタン・ツァラは、詩人アンドレ・ブルトンらに招かれ、パリに到着。彼らとともにパリ・ダダを展開したが、ツァラとブルトンの対立が深まり、1924年、ブルトン一派はダダから離脱し、『シュルレアリスム宣言』の刊行となる。ダダイズムを発端としながらも、それを凌駕せんとするシュルレアリスム運動が新たに立ち上がった。
シュルレアリスムは、無意識の世界の探求と表出によって人間精神の解放を目指した。その運動には、アンドレ・ブルトン、ルイ・アラゴン、ポール・エリュアール、フィリップ・スーポー、バンジャマン・ペレなどの文学者から、マックス・エルンスト、マン・レイ、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、ジョアン・ミロ、トワイヤン、レオノーラ・キャリントン、ルイス・ブニュエルなどの芸術家まで、錚々たる面々が集った。また、ジョルジョ・デ・キリコ、マルセル・デュシャン、パブロ・ピカソ、フリーダ・カーロなども深い繋がりがあった。
戦間期に生まれたシュルレアリスム運動は拡大していき、1930年代には黄金期を迎えるが、第二次世界大戦の勃発によりシュルレアリストたちの多くは亡命を余儀なくされる。しかし、それによって、シュルレアリスムの種は世界に撒かれ、各地で独自の発展を見せ、戦後の芸術、文化にも強い影響を及ぼすことになる。日本もその例外ではなかった。そして、100年後。文学、美術、思想など広範な領域にわたったその運動の精神は、今の時代にも生きている。100年の節目を迎えたこの機に、その深遠な世界をあらためて紐解く。
[上映作品]
シュルレアリスムの深遠なる世界にいざなう、全10作品7プログラムのラインナップ
プログラム A:『金で買える夢』
プログラム B:『皆殺しの天使』
プログラム C:ダダからシュルレアリス ムへ『幕間』『貝殻と僧侶』
プログラム D:アンドレ・ブルトン ドキュメンタリー集『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』『野性の目』『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』
プログラム E:『マック ス・エルンスト 放浪と衝動』
プログラム F:『謎の巨匠 ルネ・マグリット』
プログラム G:『トワイヤン 真実の根源』
[上映時間]*想定スケジュール
[公式サイト]
trenova.jp/surrealism100
Program A
『金で買える夢』Dreams That Money Can Buy
[1947年/アメリカ/英語/カラー/80分]
監督・脚本・編集:ハンス・リヒター
原案:マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダー、ハンス・リヒター
出演:ジャック・ビットナー、ドロシー・グリフィス、マックス・エルンスト、ジョン・ラトゥーシュ
ジョーは家賃の支払いに悩む平凡な男。ある日、人の頭の中を見ることができる能力を持っていることに気づいた彼は、事務所を開設し、欲求不満や不安を抱える人々を相手にした“夢”のビジネスをはじめるが…。本編に登場する7つの夢は、マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダー、ハンス・リヒターがそれぞれ原案を創作。シュルレアリスムや前衛芸術のオールスターが競い合うだけでなく、夢のパートの音楽にはジョン・ケージやポール・ボウルズも参加。若き日のスタンリー・キューブリックのエキストラ出演も。
Program B
『皆殺しの天使』El angel exterminador
[1962年/メキシコ/スペイン語/B&W/95分]
監督・脚本:ルイス・ブニュエル
撮影:カブリエル・フィゲロア
出演:シルビア・ピナル、エンリケ・ランバル、ジャクリーヌ・アンデレ、ルシー・カリャルド、エンリケ・G・アルバレス
ある夜、ブルジョアの邸宅で晩餐会が催される。会がはじまると、使用人たちは次々と姿を消し、執事一人が残される。晩餐を終えた招待客は、客間に腰を落ち着かせるが、夜が明けても全員が帰る方法を忘れたかのように何故か外に出ることができなくなってしまい、ついには食料も底をつき…。人間の基本的な欲求が満たされなくなるにつれ、彼らの社会性は急速に崩壊していく。解読不能なイメージを次々と登場させブラックユーモアたっぷりにブルジョア達を描いた本作は、ブニュエルのメキシコ時代の最高傑作と称される。第15回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞。
Program C ダダからシュルレアリスムへ
『幕間』Entr’acte
[1924年/フランス/B&W/22分]
監督・脚本:ルネ・クレール
脚本:フランシス・ピカビア
音楽:エリック・サティ
出演:ジャン・ボルラン、インゲ・フリス、フランシス・ピカビア、マン・レイ、エリック・サティ、マルセル・デュシャン
フランシス・ピカビアのバレエ『本日休演』の幕間に上映するために作られた、名匠ルネ・クレールによるダダイズムの短編映画。音楽は20世紀の音楽に多大な影響を与えたエリック・サティが担当。ピカビア、サティに加えて、マン・レイやデュシャンも出演。
『貝殻と僧侶』La Coquille et le Clergyman
[1928年/フランス/B&W/39分]
監督:ジェルメーヌ・デュラック
脚本:アントナン・アルトー
撮影:ジョルジュ・ペリナール
出演:アレックス・アリン、ルシアン・バタイユ、ジェニア・アタナシウ
歴史上初めてのシュルレアリスム映画。性的な欲望に取りつかれていく僧侶の妄想を幻想的に描いた作品。シュルレアリスムの詩人であり俳優としても知られるアントナン・アルトーの脚本をジェルメーヌ・デュラックが演出。
ダダからシュルレアリスムに至る過渡期の2本を1プログラムで。
Program D アンドレ・ブルトン ドキュメンタリー集
『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』André Breton malgré tout
『野性の目』L’œil à l’état sauvage
『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』Hôtel Drouot, March 31st 2003
[2003年/フランス/フランス語/カラー/63分]
監督:ファブリス・マゼ
シュルレアリスムを主導した詩人・作家であるアンドレ・ブルトンの活動の軌跡を追ったドキュメンタリー『アンドレ・ブルトン あらゆるものにもかかわらず』、彼が生涯をかけて集めたコレクションで満たされた伝説のアトリエの映像と彼の肉声によって、追い求めていたものに迫る『野性の目』、パリのオークションハウス「オテル・ドルーオ」で2003年に開催されたブルトンのコレクション展の開幕直前に展示室を撮影し、コレクション散逸前の全貌を記録した『2003年3月31日、オテル・ドルーオ』。ブルトンの思考、思想を深掘りする3つのドキュメンタリーを集めたプログラム。日本劇場初公開。
Program E
『マックス・エルンスト 放浪と衝動』Max Ernst: Mein Vagabundieren – Meine Unruhe
[1991年/ドイツ/英語・ドイツ語/カラー/100分]
監督:ピーター・シャモーニ
出演:マックス・エルンスト
声の出演:ピーター・マリンカー、シェリー・トンプソン、リンダ・ジョイ
シュルレアリスム絵画の理論的支柱であり、フロッタージュやデカルコマニーといったオートマティスムの技法を駆使して多様な作品を創造した、変幻自在の画家・彫刻家マックス・エルンスト。ドイツ出身の彼は第一次大戦への出征、レオノーラ・キャリトン、ペギー・グッゲンハイムらとの恋愛や別れ、第二次大戦時の迫害と亡命、ブルトンとの確執など波乱の人生を送った。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞監督ピーター・シャモーニが、エルンストのインタビューや創作活動の貴重な映像、彼と30年連れ添ったドロテア・タニングや周囲の人々の証言などによって、その革命的な精神や創造的な思考に迫る。日本初公開。
Program F
『謎の巨匠 ルネ・マグリット』René Magritte, le maître du Mystère
[2023年/フランス/フランス語/カラー/139分]
監督:ファブリス・マゼ
出演:ルネ・マグリット、ジャック・ロワザン、リリアン・サバティーニ、グザヴィエ・カノンヌ
シュルレアリスムを代表する画家の一人、ルネ・マグリット。「言葉とイメージ」の関係を探求し、絵画に哲学的要素を取り入れた彼の表現は、従来の美術の範疇にとどまらず、ポップアートやコンセプチュアルアート、広告デザイン、思想家などにも大きな影響を与えた。本作は、ベルギーでの幼少期から、デ・キリコの絵との出会い、パリのシュルレアリストたちとの交流、ブリュッセルでの国際的成功、第二次大戦期の苦境と戦後の新たな活動まで、マグリットの映像と作品もふんだんに使ってその足跡を追い、作風を移行させながら独自の世界を築いた彼の知られざる複雑な個性に迫る。日本初公開。
Program G
『トワイヤン 真実の根源』Toyen, the origin of truth
[2015年/フランス・チェコ/フランス語/カラー/93分]
監督:ジュリアン・フェランドゥ、ドミニク・フェランドゥ
出演:アニー・ル・ブラン、アンナ・プラヴドワ、フランソワーズ・カイユ、ジョルジュ・ゴルドフェン
チェコの近代絵画、シュルレアリスムを牽引したトワイヤン。本名はマリー・チェルミーノヴァ。トワイヤンという通称は、仏語で「市民」という意味の単語”citoyen”に由来する。人一倍の好奇心と探究心を持つ彼女は、大戦や共産党政権の台頭など激動の時代の中、芸術活動に取り組み、独自の表現方法を切り拓いた。サーカスや遊園地など娯楽のスケッチから始まる画家の道、画家・詩人のインジフ・シュティルスキーとの協業、「人工主義」の標榜、エロティシズムへの傾倒、シュルレアリスムへの接近、ブルトンやエリュアールらとの親交など、彼女の人生と表現について、丹念に掘り下げていく。日本初公開。
主催・配給:トレノバ
© 2024 trenova inc. All Rights Reserved