もち

過去の上映作品
[上映日程]8/29~9/4(休映:8/31)*一週間限定上映

“ 忘れたくない 思い出せない
 そのあいだに わたしたちはいる ”

大好きな人の声や手、ずっとここにあると思っていたこと。
大切なのに、いつか思い出せなくなる日が来るのだろうか──。
14歳の少女が私たちに問いかける。

[解説]
日本に古くから伝わる「もち」の文化をモチーフにみずみずしい物語を紡いだのは、多くのCM、MV、ショートフィルムのほか、蒼井優主演の映画『たまたま』(2011)を監督するなど、幅広く活躍する映像ディレクターの小松真弓。小松監督が一関を訪ね、多くの人々と対話をするところからこの映画は始まった。このまちだけでなく、日本の至る所で失われていく文化、伝統、人と人のつながりを残そうとする人々の思いや姿に触れ、オリジナルのストーリーが構想されていった。そして、そこで出会った少女・ユナ。彼女は実際に閉校になる中学校の3年生。彼女たちの中学生活最後の一年を追いながら、感情をできるだけありのままに映し出すために、限りなくノンフィクションに近いフィクションという手法を選択。実在する人物たちが自らの追体験を演じる姿に青春のドラマでありながらドキュメンタリーさながらに彼らの息遣いが感じられ、悲しみも喜びも真に迫る、稀有な映画を完成させた。

[あらすじ]
800年前の景観とほぼ近い姿が守られてきた岩手県一関市本寺地区。山々に囲まれ、冬には雪深くなるこの地で、古くから根付いている「もち」の文化。ひとつの臼でもちをついて、みんなで食べる──それは当たり前のように、ずっと続いて来た習慣。ここに暮らす中学三年生の少女ユナ。彼女のおばあさんが、ある日亡くなる。葬儀の日。臼と杵でつく昔ながらの方法でどうしても餅をつきたいと頑なに言い張るおじいちゃんだが、ユナにはその気持ちがわからない。でも、ユナはおじいさんの心の機微を感じてそっと寄り添う。餅というものはただの食べ物ではなく、強く、そして深い意味が込められていた──。生徒の減少から中学校は閉校が決まり、最後の一年を終えると学校もなくなる。おばあちゃんの死、閉校とともに友人、憧れの先輩が相次いで離れていく。そんな周囲の変化はユナに「いつか思い出せなくなる」という不安を与える。そして彼女は問う、「努力しないと忘れてしまうものなんて、なんだか本物じゃないみたい」。餅をつく文化と共に、その意味すら消えていきそうになっているこのまちで「忘れたくない」気持ちと「思い出せなくなる」現実の狭間を真剣に受け止め、懸命に生きるユナ。寄る辺のない世の中でその姿は、なぜか強く、確かな生き方に思える。それはきっと、日本の今を生きる私たち自身も気持ちと現実の狭間にいるから──。

『もち』
[2019年/日本/カラー/ビスタ/61分]
脚本・監督:小松真弓
撮影:広川泰士
音楽:Akeboshi
出演:佐藤由奈、蓬田稔、佐藤詩萌、佐々木俊、畠山育王
製作:マガジンハウス、TABITOFILMS
協力:JA共済
配給:フィルムランド
©TABITOFILMS・マガジンハウス

◎特別鑑賞料金:一般¥1,500

◎公式サイト:mochi-movie.com

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