チベット映画特集「映画で見る現代チベット」

過去の上映作品
[上映日程]5/1~21(休映:5/6、10、17)
*5月1日(土)『タルロ』『オールド・ドッグ』上映後、5月2日(日)『巡礼の約束』『ラモとガベ』上映後にアフタートークイベントを実施します。詳しくはページ下部をご確認ください。

“ 映画からチベットが見えてくる── ”

世界的なチベット映画人の作品を中心に、日本プレミア上映を含む貴重な7作を特集上映。

全7作の映画を通して現代のチベット社会を見つめ、同時に、21世紀に誕生したチベット映画のこれまでの歩みを考える特集です。

◎公式サイト:moviola.jp/tibet2021

◎上映記念トークイベントあります!

トーク①
“チベット映画について”
日時:5月1日(土)14時35分~『タルロ』、16時55分~『オールド・ドッグ』上映後
聞き手:小川康
ゲスト:小川真利枝

トーク②  
“チベットの家族・女性について”
5月2日(日)13時55分~『巡礼の約束』16時~『ラモとガベ』上映後
聞き手:小川康
ゲスト:小川真利枝

ゲストプロフィール

小川康
チベット医(アムチ)・薬剤師。東北大学薬学部卒業後、1999年、インドに渡ってチベット語を学び、2001年、メンツィカン(チベット医学・暦法大学)に合格。外国人としてはじめてのチベット医(アムチ)となる。現在、長野県上田市の山奥で「薬房 森のくすり塾」を開業。主に日本の伝統薬を取り扱いつつ、山仕事、畑仕事に勤しんでいる。主な著書は『僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと』(径書房)『チベット、薬草の旅』(森のくすり出版)。上田市在住。

小川真利枝
ドキュメンタリー作家。早稲田大学教育学部卒業後、2007年テレビ番組制作会社に入社、2009年に退社し、フリーのディレクターに。ラジオドキュメンタリー『原爆の惨禍を生き抜いて』(2017)(文化庁芸術祭出品、放送文化基金賞奨励賞)、ドキュメンタリー映画『ラモツォの亡命ノート』(2017)などを制作。 長野市在住。

ソンタルジャ監督作を見る

『ラモとガベ』(原題)<日本プレミア上映>
[2019年/カラー/110分]
監督:ソンタルジャ
出演:ソナム・ニマ、デキ、スィチョクジャ
原題:拉姆与嘎贝|英語題:Lhamo and Skalbe
2019年サンセバスチャン映画祭公式出品
©GARUDA FILM
[解説]
『草原の河』『巡礼の約束』が日本でも公開されているソンタルジャ監督の長編第4作。2019年サンセバスチャン映画祭で世界初上映された。本作は、東チベットで生まれた世界最長の英雄叙事詩「ケサル王物語」に若い男女の運命を重ねて描いた意欲的な最新作である。映画で重要な役割を担う少年役を『巡礼の約束』息子ノルウ役のスィチョクジャが演じている。
[あらすじ]
ラモとガベは婚姻届を出しに行ったところ、ガベが以前結婚しており、まだ離婚が成立していないことを知る。元妻とは4年前に結婚の約束をしたものの、間際で破談となり、ガベは自分が結婚していたことを知らなかったのだ。ガベは離婚するために元妻を探し始め、元妻が世俗を捨て、出家していたことを知る。尼僧となった元妻を寺院に訪ねるが、会うことさえままならず、ガベの離婚話は一向に進まない。一方ラモは、正月に行われる歌舞劇「ケサル王物語」で、罪のために地獄に落ちた女性の役で稽古に取り組んでいたが、その役にわだかまりを感じ、次第に結婚への恐れを感じ始める。ラモは、人に言えない秘密を抱えていた…。
[上映日程]5/2、5、8~9、11~14

『巡礼の約束』
[2018年/中国/チベット語/シネスコ/109分]
監督:ソンタルジャ
出演:ヨンジョンジャ、ニマソンソン、スィチョクジャ
中国語題:阿拉姜色/英語題:Ala Changso
字幕:松尾みゆき/字幕監修:三宅伸一郎
配給:ムヴィオラ
©GARUDA FILM
[解説]
第21回上海国際映画祭で審査員大賞・最優秀脚本賞を受賞したドラマ。チベット人歌手のヨンジョンジャが企画と主演を務め、聖地巡礼に向かう家族を描く。亡き前夫との約束を果たすため厳しい旅を続ける妻と彼女を追う夫、夫と血のつながりのない息子が紡ぐ物語を映し出す。『草原の河』で注目されたソンタルジャが監督を担当した。
[あらすじ]
山あいの村で、夫のロルジェ、ロルジェの父と暮らすウォマ。病院である事実を告げられたウォマは、聖地ラサへの五体投地での巡礼旅に、一人で行くと決意する。半年以上もかかる巡礼の旅に、初めは反対していたロルジェだが、ウォマの固い決意にラサ巡礼を受け入れる。しかし妻の決意にはある秘密があった。旅に出た妻を追ってくる夫。そして妻の実家に預けられ、心を閉ざしていた前夫との息子もやってきた。後悔、嫉妬、わだかまりを抱えながらも、少しずつ結びついていく三人。しかし、そんなある日、ウォマがついに倒れてしまう…
[上映日程]5/2、5、8~9、11~14

『草原の河』
[2015年/中国/チベット語/ビスタサイズ/98分]
監督・脚本:ソンタルジャ 
出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテンほか
配給:ムヴィオラ
原題:河|英語題:River
©GARUDA FILM
[解説]
チベットで牧畜に携わる一家の娘と父、祖父の心情を描いたヒューマンドラマ。間もなく生まれる子供に母を取られるのではという娘の不安や、少女の父と祖父の確執などが、厳しく広大な自然と共に映し出される。『オールド・ドッグ』などのペマ・ツェテン監督の作品に参加してきたソンタルジャがメガホンを取る。美しい風景と素朴な登場人物が織り成す家族の物語に胸を打たれる。
[あらすじ]
チベット。空と大地が広がる。厳しい自然の中で牧畜を営む家族。幼い娘は、母が新しい命を授かったと知り、やがて生まれてくる赤ん坊に母を取られてしまうと心を痛める。父は、4年前の出来事をきっかけに自分の父親をいまも許せないでいる。娘、その父、そして祖父──。家族三代それぞれの心情を、河が見つめている。
[上映日程]5/3、7、15~16

『陽に灼けた道』<劇場未公開>
[2011年/カラー/89分]
監督:ソンタルジャ
出演:イシェ・ルンドゥプ、ロチ、カルザン・リンチェン
芸術指導:ペマ・ツェテン、李興
原題:太陽総在左辺 英語題:The Sun Beaten Path
©GARUDA FILM
2011年バンクーバー国際映画祭タイガー&ドラゴン賞受賞
2011年福岡国際映画祭アジア・フォーカス正式招待
2011年香港国際映画祭特別賞受賞
[解説]
『草原の河』『巡礼の約束』のソンタルジャ監督の長編デビュー作。バンクーバー国際映画祭アジア部門新人監督賞はじめ数々の映画賞を受賞して、一躍世界中に注目された。自分の過失で母を死なせてしまい、心を閉ざした青年が、ある老人との出会いから心を溶かしていく物語を、極端に少ない台詞で映像で物語っていく大胆な構成で描き、ソンタルジャの個性が強く表れている。主人公を演じたイシェ・ルンドゥプの表情の切り取り方や、老人の存在を狂言回しのように配した語り口も独特で、デビュー作の荒々しさはあるものの、ソンタルジャ監督の才気を感じさせる必見作である。
[あらすじ]
自分の過失で母を死なせてしまった青年ニマは自責の念にとらわれ、聖地ラサへ巡礼の旅に出るが、苦しみは消えない。心の傷を抱えたまま故郷へ帰るバスに乗ったニマは、そのバスの中で不思議な老人と出会う。故郷が近くにつれ、ニマは自らを孤独に追いやるように途中でバスを降りるが、老人はニマ気がかりで、バスを降り、ニマとともに旅を続ける。老人の温かい語りかけにニマは少しずつ心を開いていくが、老人もまた家族の問題を抱えていることが明らかになる……。
[上映日程]5/3、7、15~16、18~21


 

ペマ・ツェテン監督作を見る

『オールド・ドッグ』<劇場未公開>
[2011年/カラー/88分]
監督:ペマ・ツェテン
出演:ロチ、ドルマキャプ、タムディンツォ  
撮影:ソンタルジャ
原題:老狗|英語題:Old Dog
©Mani Stone Pictures
[解説]
長編第一作『静かなるマニ石』がバンクーバー国際映画祭やプサン国際映画祭はじめ数々の映画祭で受賞し、名匠アッバス・キアロスタミ監督に「心から感動を覚えた」と称賛されたペマ・ツェテン監督の純チベット語映画の長編第3作。1990年代末、中国富裕層の間で起きたチベットのマスチフ犬ブームを背景に、「犬を通じてチベット族の現状を表現したかった」と監督が語るように、中国富裕層が象徴する経済発展がチベット高原の牧畜民の生活にも容赦なく入り込んでくる状況をストレートに描き出している。それまでのペマ・ツェテン作品と大きく異なり、怒りや絶望を鋭く投げかけ、特にそのラストは、観客に大きな衝撃を与えた。製作は、ペマ・ツェテン監督同様、世界にチベット語映画を送り出した重要人物で、詩人としても有名なチベット人映画プロデューサーのサンジェ・ジャンツォ。撮影はペマ・ツェテン監督の4歳下の後輩にあたる『巡礼の約束』のソンタルジャ監督が担当している。第12回東京フィルメックスグランプリ受賞。
[あらすじ]
広々とした草原に生きる牧畜民の老人。彼は老マスチフ犬を飼っている。中国の大都市に暮らす富裕層の間に起きたマスチフ犬ブームから、犬泥棒が現れたり、しつこく付きまとう仲買人がやってきたり、心の休まる暇がない。老人の息子までも、大金を得ていい暮らしがしたいと願い、犬を高値で売り飛ばそうとするのだが、老人は「犬は民族の誇り」と手放すことを頑なに拒む……。
[上映日程]5/1、4、8~9、11~14

『タルロ』<劇場未公開>
[2015年/モノクロ/123分]
監督:ペマ・ツェテン
出演:シデ・ニマ、ヤンシクツォ
原題:塔洛|英語題:Tharlo
©Mani Stone Pictures
[解説]
小説家としても知られるペマ・ツェテン監督自身による漢語小説『タルロ』を映画化。社会の変化に翻弄されて自身のアイデンティティを見失うチベット牧畜民を、寓話的でありながらも鋭く鮮烈に描いた。全編モノクロで、テーマに対するシンプルで深い洞察、洗練されたフレーミング、ユーモアを含んだ重層的な演出、編集に至るまでペマ・ツェテン芸術を代表する一作として国内外で高い評価を得た。『オールド・ドッグ』に続いて、東京フィルメックスグランプリ受賞をはじめ、チベット人監督の作品として台湾・金馬奨で初めて最優秀作品賞にノミネートされた作品でもある(同年の最優秀作品はホウ・シャオシェン『黒衣の刺客』だった)。
[あらすじ]
孤児として育ち、家族のいない羊飼いのタルロ。ある日、役所からID(身分証明書)を作れと言われ、タルロはIDに必要な写真を撮りに町へ。すると写真館で、そんなボサボサ髪ではダメだと言われ、今度は髪を切るために入った理髪店へ。理髪師の女はタルロに親しげに話しかけ、女性を知らないタルロはいとも簡単に籠絡され……。
[上映日程]5/1、4、8~9、11~14


 

チャン・ヤン監督の“外の目”

『ラサへの歩き方 〜祈りの2400km』
[2015年/中国/チベット語/16:9/118分]
監督:チャン・ヤン
出演:チベット巡礼をする11人の村人
英題:PATHS OF THE SOUL
配給:ムヴィオラ
[解説]
五体投地とは、両手・両膝・額(五体)を地面に投げ伏して祈る、仏教でもっとも丁寧な礼拝の方法。チベットには今も聖地巡礼を、五体投地で礼拝しながら、長い時間をかけて進んでいく人々がいる。「しゃくとり虫のように進む」と説明されるように、やってみれば、いかに進むのが大変かがわかる。本作は、チベットの小さな村の11人の村人が、聖地ラサへ、そして最終目的地の聖山カイラスへ、2400kmもの距離を、なんと五体投地で行く巡礼旅を描いた驚くべきロードムービーである。映画は、丁寧に村人たちの暮らしを見せ、様々なドラマがありながらも大げさにすることなく巡礼を撮る。さりげない会話や行動の中から「他者のために祈る」というチベット仏教の考え方が伝わってくる。なぜ彼らは他者の幸福を願うのか。過酷に見える巡礼なのに、なぜ彼らは楽しげなのか。祈る。歩く。眠る。笑う。そこからシンプルな行いの中にあるよろこびが見えてくる。その心のありかが見えてくる。複雑に生きすぎる現代の人々に、チベットの巡礼旅が何かを気づかせてくれるだろう。
[あらすじ]
チベット、カム地方マルカム県プラ村。ニマの家では、父親が亡くなり、まだ四十九日が明けず、法事が行われていた。父の弟のヤンペルは、兄のように思い残すことなく自分は死ぬ前に聖地ラサ行きたいと願っていた。ニマは叔父の願いを叶え、叔父を連れ、ラサへ巡礼に行く決意をする。彼らの巡礼のことを知ると、次々と同行を願う村人が集まり、老人、妊婦、そして幼い少女タツォを含め一行は総勢11人になった。村から五体投地で1200km離れた聖地ラサへ、さらにそこから1200kmあるカイラス山への巡礼の旅がはじまる。
[上映日程]5/ 3、7、8~9、11~14

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