WANDA ワンダ *オープンダイアローグ対象作品

過去の上映作品

[上映日程]8/20~9/2(休映:8/22、29)

“ 哀しいいほど滑稽な逃避行が始まる——— ”

「小さな宝石」と称される映画史に残る一編、監督・脚本・主演バーバラ・ローデン伝説のデビュー作にして遺作『ワンダ』

[INTRODUCTION]
世界中の映画人たちから「忘れられた小さな傑作」と賛美された、バーバラ・ローデン監督・脚本・主演のデビュー作にして遺作となった『ワンダ』。70年代アメリカ・インディペンデント映画の道筋を開いた奇跡の映画。
 1970年ヴェネツィア国際映画祭最優秀外国映画賞を受賞するが、その名声とは裏腹にアメリカ本国ではほぼ黙殺される。フランスの小説家・監督のマルグリット・デュラスはこの映画を「奇跡」と絶賛し、配給することを夢見ていると語る。デュラスの夢を実現すべくフランスの大女優イザベル・ユペールは配給権を取得しフランスで甦らせた。マーティン・スコセッシ監督設立の映画保存組織とイタリアのファッションブランドGUCCIの支援を受けプリントが修復される。その後、ニューヨーク近代美術館で実施された修復版上映会は、行列が出来るほどの大成功を収めた。本作の熱烈な支持者であると公言するソフィア・コッポラ監督が自ら作品を紹介、観客の中にはマドンナの姿もあったという。

 ペンシルベニア州。ある炭鉱の妻が、夫に離別され、子供も職も失い、有り金もすられる。少ないチャンスをすべて使い果たしたワンダは、薄暗いバーで知り合った傲慢な男といつの間にか犯罪の共犯者として逃避行を重ねる…。その粒子の粗い16mmフィルムの質感はティファニーブルーを基調に、シネマ・ヴェリテ・スタイル(ドキュメンタリー撮影手法)で剥き出しのアメリカの風景をスクリーンに映し出す。

 巨匠監督エリア・カザンの妻でもあるローデンは、彼からの独立宣言とも言うべき本作を残し、癌により48歳の生涯を終える。だが、その評判は次第に高まり、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、ジョン・ウォーターズ、ケリー・ライカート、ダルデンヌ兄弟監督ら名だたるアーティストが彼女を不世出の作家として敬意を表する。“インディペンデント映画の父”と称されるジョン・カサヴェテスは「『ワンダ』は私のお気に入りの作品。彼女は正真正銘の映画作家だ」と高く評価する。見向きもされなかった映画が、2017年、後世に残す価値がある作品として認められアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録される。崖っぷちを彷徨う女の人生を漂流するロードムーヴィーが、近年これほどまでに愛されるようになった。

[STORY]
ペンシルベニアの炭鉱町に住むワンダは、自分の居場所を見つけられずにいる主婦。知人の老人を訪ねお金を貸してほしいと頼むワンダは、バスに乗り込み夫との離婚審問に遅れて出廷する。タバコを吸いヘアカーラーをつけたまま現れたワンダは、夫の希望通りあっさりと離婚を認め退出する。街を漂うワンダは、バーでビールをおごってくれた客とモーテルへ。 ワンダが寝ている間、逃げるように部屋を出ようとしたその男の車に無理矢理乗り込む。だが、途中ソフトクリームを買いに降りたところで逃げられてしまう。 またフラフラと夜の街を彷徨い歩き、一軒の寂れたバーでMr.デニスと名乗る小悪党と知り合う。彼に言われるがまま、犯罪計画を手伝うハメになるワンダの行方は…。

『WANDA ワンダ』
[1970年/アメリカ/モノラル/1.37:1/103分]
監督・脚本:バーバラ・ローデン
撮影・編集:ニコラスT・プロフェレス
照明・音響:ラース・ヘドマン
制作協力:エリア・カザン
出演:バーバラ・ローデン、マイケル・ヒギンズ、ドロシー・シュペネス、ピーター・シュペネス、ジェローム・ティアー
原題:WANDA
日本語字幕:上條葉月
提供:クレプスキュール フィルム  シネマ・サクセション   
配給:クレプスキュール フィルム
(c)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS

◎1970年ヴェネツィア国際映画祭最優秀外国映画賞
◎2017年アメリカ国立フィルム登録簿永久保存

“私は無価値でした。友達もいない、才能もない。私は影のような存在でした。『ワンダ』を作るまで、私は自分が誰なのか、自分が何をすべきなのか、まったく分からなかったのです。”
バーバラ・ローデン

『ワンダ』は紛れもなく映画界の最高傑作のひとつに数えられる。
ローデンは、たった1本の長編映画を撮っただけなのに、その1本で映画の歴史に深く刻まれた特別な監督の一人です。
イザベル・ユペール(女優)

骨の髄まで贅肉を削ぎ落とした、質の高いインディペンデント映画の最初の例の一つ。
ラストシーンのフリーズフレームの画像は、永遠に私たちの心に残る。
Variety

なぜバーバラ・ローデンは映画史の中でもっと称賛されないのでしょうか?世界は『ワンダ』のような映画をもっと必要としている。
ケリー・ライカート(映画監督)

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